西洋 絵画・彫刻

ピエール・オーギュスト・ルノワール 《レースの帽子の少女》 1891年
19世紀から20世紀は、フランスを中心とした近代美術がもっとも急激な変化を遂げた時代です。ポーラ美術館の核となる西洋近代絵画のコレクション約400点は、まさにこの時代を生きた画家たちの作品です。印象派、ポスト印象派、新印象派などが100点、そして1920年代のパリに集まった外国人画家たちのグループ「エコール・ド・パリ」の画家たちの作品100点を中心に、新古典主義のアングル、ロマン主義の画家ドラクロワから、抽象絵画の創始者カンディンスキー、シュルレアリスムの画家たちまで、モダン・アートの流れをたどる構成になっています。
そのなかでも、ポーラ美術館のコレクションを築いたコレクターであり、ポーラ創業家2代目、鈴木常司(1930-2000)が特に注目した画家は、印象派を牽引したモネ、「生きる歓び」を描き続けたルノワール、今日の絵画に決定的な影響を与えたピカソです。日本最多のコレクションを有する画家が多いこともポーラ美術館の特色で、モネ19点、ルノワール16点、ピカソ19点、レオナール・フジタ176点、ドガ9点、ゴッホ3点等の絵画を収蔵しています。

日本 絵画・彫刻

岡田三郎助 《あやめの衣》 1927年
日本の洋画
モネやルノワールなどフランス印象派の画家たちが活動を開始した1860年代は、日本で言えば、ちょうど幕末から明治維新にかけての時代にあたります。この頃、いわゆる「鎖国」から開国に転じて西洋近代文明の導入に邁進するようになった日本は、絵画の分野においても、西洋の油絵の技法を学ぶことに情熱を傾けた多くの優れた画家を生み出しました。
当初絵具や絵筆を手作りし、ほとんど独学で油絵を習得した初期洋画の偉才、高橋由一や、明治政府のお雇い外国人画家フォンタネージの下で学んだ小山正太郎、浅井忠から、渡仏して油絵の修業をした黒田清輝や藤島武二、大正期に活躍した「麗子像」で知られる岸田劉生や夭折の異色画家村山槐多、第二次世界大戦前から戦後にわたって長いあいだ旺盛な創作力を示した梅原龍三郎や安井曾太郎など、数多くの優れた画家たちの秀作が集められており、深く西洋絵画の影響を受けながら伝統的な美意識を活かし続けてきた日本近代洋画の歴史をたどることができます。

日本画
ポーラ美術館の日本画コレクションは、戦後の作品を中心とした約160点で構成されています。コレクションの特徴は、一つには、日本画壇の最高峰にいた画家の作品が収集され、近代日本画の流れを辿れるようになっていること、もう一つには、前時代の因習にとらわれず新しい展開を見せた画家たちが選ばれていることです。コレクションの代表的な画家は、たとえば伝統的な日本画に欠かせない要素であった線描を排除し、西洋の空気遠近法に倣ったいわゆる「朦朧体」(もうろうたい)で近代日本画の方向性を示した横山大観、1914年(大正3)に再興された日本美術院展を発表の場とし、新しい歴史画を描き「新古典主義」を確立した小林古径、安田靫彦、前田青邨、「新日本画の創作」を目指して「瑠爽画社」(るそうがしゃ)を結成し、歴史風俗画主体の大和絵の伝統から脱却しようとした杉山寧、髙山辰雄、山本丘人らがあげられます。特筆すべきは杉山寧のコレクション43点で、これは国内最大級のコレクションといえます。

工芸と化粧道具

エミール・ガレ 《ケシ文花器》 1900年頃
ガラス工芸
ポーラ美術館は総数790点のガラス工芸を収蔵しており、その大半がアール・ヌーヴォー、そしてアール・デコの時代のものです。自然や動植物を取り上げて、有機的なフォルムの作品を数多く生み出したエミール・ガレや、端正な造形と幾何学的な構成を有する作品で一世を風靡したルネ・ラリックといった、ふたつの美術運動を代表する作家だけではなく、ドーム兄弟やルイス・C・ティファニー、そしてヴィクトール・アマルリック・ワルター等の作品を通じて、19世紀末から20世紀初頭に開花した魅力あふれるガラス工芸の歴史を概観できます。

東洋陶磁
ポーラ美術館の東洋陶磁コレクションは、中国、韓国、日本の鑑賞古陶磁によるものです。総数約200点の中心をなすのが中国陶磁で、漢時代から清時代まで各時期にわたって精選された作品が揃っています。とりわけ康煕五彩をはじめとする明・清時代の五彩の色絵磁器が充実しており、コレクションに通底する華やかながらも穏やかな美しさを物語っています。韓国陶磁では高麗青磁に優品が揃っており、日本陶磁では古九谷、柿右衛門といった肥前の色絵磁器が中心をなしています。

化粧道具
世界的にも珍しい6700点の化粧道具コレクションは、時代は古代から現代まで、地域は日本、ヨーロッパを中心にアフリカ、オセアニアにまで及びます。18~19世紀にかけてのフランス及びイギリスの化粧セットや香水瓶、20世紀に入り登場したコンパクトやフェイスパウダーのケースなど、そのバリエーションは実に多彩です。工芸的な美しさだけでなく、描かれた模様、使われ方、そして時代的、社会的背景を交えながら、東西の化粧風俗や美意識をご紹介します。