モネは1899年から睡蓮を描いていますが、現在、オランジュリー美術館の「睡蓮の間」に展示されている最晩年の「睡蓮」大装飾画にいたるまで、「睡蓮」を主題とした作品は約200点残されています。モネは、最初睡蓮の池と日本風の橋の風景を空間として捉えた作品を描いていますが、彼の興味は、次第に睡蓮の浮かぶ水面に向けられていきます。モネは同じモティーフを描くことで、季節や時間とともに変化する光の効果を捉えようとしました。太陽の光は、季節や天気、時間帯によって異なります。朝の光は白くまぶしく、夕暮れ時の光は桃色やオレンジに見えます。同じ主題で異なる時間帯に描かれた作品を並べることで刻一刻と移りゆく光の表情を表現できるのです。この作品では、水面のさまざまな光による変化を捉えることで、空の色や雲の動き、周囲の木々の存在、水面の下の世界などを表現し、画面外の世界の存在の暗示と象徴に満ちています。