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展覧会構成/第2部のおもな新収蔵作品
ゲルハルト・リヒター 《抽象絵画(649‐2)》
絵画表現の可能性を切り開く現代絵画の最高峰の一人、ゲルハルト・リヒター(1932‐)は、その画業の初期にはおもに写真を利用した具象的な絵画制作を展開していたが、1970年代後半に、後のライフワークとなる「抽象絵画」のシリーズに着手した。1980年代半ばまでの、手の軌跡がはっきりと見て取れる作例を経て、1980年代後半以降に本シリーズはスタイルとしての洗練を迎える。1987年に制作された本作品は、スキージ(板)を使った塗り重ねによって生まれた積層と絵具の物質感が豊かなイメージを喚起し、複雑に重なり合いつつも明快な構成、画面に溢れる明るく豊かな色彩と没入的なスケール感が、「抽象絵画」の代表的な作例と呼びうる完成度と安定感を示している。