モネとマティス - もうひとつの楽園 2020年4月23日(木)から2020年11月3日(火・祝) 開館時間 9:00〜17:00 会期中無休

展覧会について

[ 2020/04/27 ]

展覧会構成

1 「ここではないどこか」を求めて

旅を糧としたモネとオリエンタリズムに傾倒したマティス

■モネ|ツール・ド・フランス - モネのフランス周遊紀行

芸術の都パリを中心に展開した印象派の運動の中心的な存在として、モネはパリと郊外における近代化された風景を描き、名声を高めました。一方でフランスの各地を訪れて戸外制作を行い、その土地ならではの景観や賑わい、そして豊かな自然を取り上げました。年齢を重ねながら風景画の制作を続けていくうち、モネは次第に都市の喧騒から遠ざかり、独自の風景表現を探るようになります。旅を糧としながら新たな風景を発見し、絵画へと描き留めた画家の足跡を辿ると、モネならではのフランス周遊紀行の道程が浮かび上がることでしょう。

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■マティス|東方からの啓示 - マティスにおける異国趣味

植民地主義を背景に、美術においてもオリエンタリズムが19世紀に全盛期を迎えましたが、マティスもまた、イスラム美術や日本美術から空間表現や色彩など多くを学びました。とくにイスラム美術に見られる、画面を覆いつくすような装飾模様の表現からは大きな影響を受けています。またモロッコなどへ旅し、テキスタイルや調度を持ち帰りました。1920年代には異国風の装束を身につけた女性をモデルに制作し、特徴的な形をした中東の火鉢などもたびたび登場します。

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2 理想の地を見つけたモネとマティス キーワードは「光」

■モネ|ジヴェルニー - 地上の楽園

都市の喧騒から離れて、自然豊かでのどかなジヴェルニーの村に落ち着いたモネは、1890年に邸宅を購入し、風景画を描くための理想的な環境を整えるため、庭の造成を開始します。四季折々の植物が咲きほこる「花の庭」、そして日本風の太鼓橋を架けた睡蓮の池のある「水の庭」を整備したのち、自らの管理の行き届いた環境を、連作という形式で描き始めました。時間や季節、そして天候といった気まぐれな自然がもたらす移ろいゆく光の探究を進展させるうえで、モネの理想を実現した誰にも煩わされることのない庭は、人工的でありながらも、自然のアトリエとしての役割を果たしたのです。

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■マティス|ニース - 銀色の光

1917年、第一次世界大戦が激化するなか、ニースを訪れたマティスは、「毎朝この光が見られるのだとわかったとき、自分の幸福が信じられなかった」と述べるほど、南仏の明るい陽光に魅了されます。翌年には、「古いロココ風の客間で裸婦や人物像を描くのが楽しみで四年間滞在した」という海岸沿いのホテルで、居心地のよさそうな客室や、窓からのニース湾の眺めを描きました。当時熱心に練習していたヴァイオリンが描きこまれることもあり、ニースでの日々の暮らしがうかがえます。1921年以降はアパルトマンを借り、本格的にアトリエを構えました。ホテルとは異なり、自由に室内を飾り付けることが可能になると、独自の探究をより深めていきます。

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3 観る者をそれぞれの「楽園」へといざなうふたりの芸術の到達点

■モネ|〈睡蓮〉 - 循環する自然

モネが理想を実現した庭で描いた連作の集大成となったのが〈睡蓮〉であり、今日では世界中に200点を超える作品が残されています。水面に反映する瞬間的な光の微細なニュアンスを捉えたひとつひとつの作品には、一日のさまざまな時間やそれぞれの季節に特徴的な光の効果が記録されています。自らの個展でモネ自身が幾度となく試みたように、同じ主題をとりあげた作品を一堂に会し、連作を全体として見せることで、時間や季節の移り変わり、すなわち自然の循環を提示する点にこそ、モネの〈睡蓮〉制作の目論見がありました。オランジュリー美術館の楕円形の部屋に設置された名高い装飾画は、このような試みの到達点として位置づけられます。

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■マティス|楽園の創出 - 絵画を超えて

マティスは晩年、芸術家としての名声を徐々に高める一方で苦難に見舞われます。病を患い大手術を受けたほか、第二次世界大戦により疎開を余儀なくされるなどの心労が重なりました。しかし、「私が夢見るのは心配や気がかりの種のない、均衡と純粋さと静穏の芸術だ」と述べたとおり、マティスは鑑賞者が癒されるような芸術を生涯追求しました。85歳で亡くなるまで、絵画にとどまらず、礼拝堂装飾や、タペストリー、挿絵本など制作活動は多岐にわたりました。病身となった晩年のマティスが取り入れたのが、手元ではさみを操るだけで制作できる切り紙絵の手法です。マティスの切り紙絵をもとに、シルクスクリーンで制作された《オセアニア》には、「空間は私の想像力だけの広がりをもっている」というマティスの言葉のとおり、かつて旅したタヒチの鳥や珊瑚、黄金に輝く光などの記憶が無限に広がっています。

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