展覧会
12/8
2018
3/17
2019

ポーラ美術館コレクションによる「名画の時間」

2018.12.08 — 2019.03.17

会期

2018年12月8日(土)-2019年3月17日(日) *会期中無休

 

瞬間、時代、永遠性ー絵画に描かれた時間をたどる

音楽や映画とは異なり、絵画作品は時間とともに変化することも動き出したりすることもありません。しかし、描かれた世界にはいくつもの「時間」が表現されています。わずかな時間を閉じ込めた「瞬間」だけではなく、同時代のモティーフを取り入れることで表される特定の「時代」や、文学作品と交わることで生まれる「物語性」など、その表現方法はさまざまです。

 

形をもたない「時間」とは、絵画においてどのように表現されるのでしょうか。近代において大きく変化した時間の概念は、人々の生活だけでなく画家たちの表現にも大きな影響を及ぼしています。

 

本展覧会は、ポーラ美術館が収蔵する珠玉の作品のなかから、映画に描かれた「時間」の表現に焦点をあて、フラワーアーティストの東信によるコラボレーション作品を交えながら、画家たちの探求の軌跡を辿ります。

 

開催概要

■出品点数:計80点(油彩45点、版画35点)

■主な出品作家

アルフレッド・シスレー、クロード・モネ、ピエール・オーギュスト・ルノワール、アンリ・ルソー
フィンセント・ファン・ゴッホ、ジョルジュ・スーラ、アンリ・マティス、ラウル・デュフィ、
パブロ・ピカソ、マルク・シャガール、高橋由一、黒田清輝、東山魁夷、杉山寧、平山郁夫

 

キュレーターに聞く!展覧会のみどころ

1.「瞬間」の情景や「時代」の空気、「永遠性」など、絵画における「時間」をテーマに、ポーラ美術館の1万点のコレクションから選んだ珠玉の作品約80点を展覧します。

 

2.形をもたない「時間」を描くために、画家たちがどのようにモティーフや表現方法を選んだのか。西洋絵画、日本の絵画、版画と幅広いジャンルの作品を通して探ります。

 

3.東信氏とのコラボレーション作品や展示の仕掛けによって、絵画に描かれた時間を体感しながら、作品を鑑賞いただけます。

 

展覧会構成

第1章 瞬間と感覚

印象派の画家たちは、伝統的なアカデミズムに反発して神話や歴史画という主題から離れ、現実の光景をカンヴァスに写し取ろうとしました。しかし、今まさに目の前で起きている現象を瞬時に捉えようとしても、その一瞬はカンヴァスに描かれた途端に過去のものになってしまいます。そこで、彼らは風景を記録するものではなく、風景から得た感覚を重要視しました。明瞭な描写を避け、すばやい筆致を用いて、色と光の感覚そのものをカンヴァスの上に表現しています。風景は過去のものになろうとも、絵画に刻まれた感覚は、描かれた瞬間の現象を不変のものとして我々に伝えてくれます。

クロード・モネ 《ジヴェルニーの積みわら》 1884年

クロード・モネ 《ジヴェルニーの積みわら》 1884年

アルフレッド・シスレー 《ロワン河畔、朝》 1891年

アルフレッド・シスレー 《ロワン河畔、朝》 1891年

高橋由一 《鵜飼図》 1892年

高橋由一 《鵜飼図》 1892年

第2章 時代の肖像

絵画のなかには、画家たちが写し取った時代の空気が封じ込められています。たとえば最新の技術が生み出した乗り物に乗り、流行のファッションに身を包んだ人々の姿を描いた作品は、当時の活気を伝えています。また、戦争の時代には、それ自体が重要な主題となるだけでなく、社会に蔓延する不穏な空気や人々の複雑な心情が絵画の中に表されています。戦争によって疎開や亡命を余儀なくされた画家たちも、辛く悲しい状況に耐え忍びながら絵筆を握っています。ここでは、19世紀から20世紀の画家たちがカンヴァスにとどめた、時代の肖像ともいうべき作品をご紹介します。

ピエール・オーギュスト・ルノワール 《レースの帽子の少女》 1891年

ピエール・オーギュスト・ルノワール 《レースの帽子の少女》 1891年

エドゥアール・マネ 《ベンチにて》 1879年

エドゥアール・マネ 《ベンチにて》 1879年

クロード・モネ 《散歩》 1875年

クロード・モネ 《散歩》 1875年

アンリ・ルソー 《エッフェル塔とトロカデロ宮殿の眺望》 1896-1898年

アンリ・ルソー 《エッフェル塔とトロカデロ宮殿の眺望》 1896-1898年

第3章 今日の花を摘め

花の美しさは人々の目をとらえて離さず、古くから絵画のなかに描きとめられてきました。「カルペ・ディエム」(今日の花を摘め)という西洋の格言にあらわされるように、私たちは花がやがて時間の経過とともに散りゆくことを知り、その姿に儚さを見出しています。芸術家たちは今という瞬間に輝く花の美しさをさらに際立たせようとしました。洋の東西を問わず、画家たちは野山でさまざまな表情を見せる花の姿を追いかけ、絵画に留めています。また、切り花として室内の花瓶に生けられた花は、画家たちにとって思い通りに配置して構図や表現を試し模索するうえで、重要なモティーフともなりました。色彩や筆致を駆使して、画家たちは花の可憐な美しさや、ときに神秘的な佇まいをとらえています。

フィンセント・ファン・ゴッホ 《アザミの花》 1890年

フィンセント・ファン・ゴッホ 《アザミの花》 1890年

ピエール・ボナール 《ミモザのある階段》 1946年頃

ピエール・ボナール 《ミモザのある階段》 1946年頃

クロード・モネ 《睡蓮の池》 1899年

クロード・モネ 《睡蓮の池》 1899年

アンリ・マティス 《中国の花瓶》 1922年

アンリ・マティス 《中国の花瓶》 1922年

第4章 永遠の今―存在と時間

人が生きることのできる時間には限りがあり、太古から続く長い時間に比べればごく短い時間に過ぎません。しかし絵画は、繰り返される自然の循環や人々の営みを切り取ることで、悠久の時間を表現することができます。引き潮によって浜辺に横たわる船を描いたスーラ《グランカンの干潮》は、画家が感じたある一瞬の眩さを捉えているとともに、周期的に繰り返し、循環する自然の不変性を感じさせます。また杉山寧が中東で出会った風景をもとに描いた《水》は、水汲みという日々の営みの背景に紺碧の大河が広がり、悠久の時の流れを象徴しています。

ジョルジュ・スーラ 《グランカンの干潮》 1885年

ジョルジュ・スーラ 《グランカンの干潮》 1885年

第5章 想像上の時間―本と物語

絵画は古くから神話や宗教の物語のために用いられ、さまざまなイメージの世界を生み出してきました。造形の革新を目指した20世紀の画家たちも、物語や詩と関わりながら想像上の豊かな時間を紡いでいます。ルオーはキリスト教の聖書の物語を手がかりに、同時代の戦争の惨禍を憂い、シャガールは古代の叙事詩をもとに、あざやかな色彩の交響詩とも呼ぶべき世界を展開しています。絵画は瞬間の芸術であるだけではなく、現実の時間を超えた無限の時間へと開かれているのです。

マリー・ローランサン 《『不思議の国のアリス』より》 ????年

マリー・ローランサン 《『不思議の国のアリス』より》 ????年

マルク・シャガール 《牧場の春『ダフニスとクロエ』第5図》 1961年

© ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2018, Chagall®

マルク・シャガール 《牧場の春『ダフニスとクロエ』第5図》 1961年

© ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2018, Chagall®