12月2日(月)~13日(金)まで臨時休館いたします
ルドンは、ブルターニュを何度か訪れている。1875年にはカンペールを訪れた後、ドゥアルヌネで夏を過ごした。彼は『私自身に、日記(1867-1915)』(1922年)に収録されたカンペール滞在中の7月3日の日記のなかでブルターニュについて、「低く垂れ込めた北方」、「暗い色を背負った地方」と記している。また、1883年にはモルガンに行き、1884年には水の浸食作用によって屈曲に富んだモルビアン湾に面した段丘の上に位置する町ヴァンヌに滞在した。 パステルで描かれた≪ブルターニュの風景≫(ポーラ美術館蔵)には、寄り添うようにして建つ、この地域独特の屋根の勾配が大きい家並みが描かれ、その家を覆うように蒼い空が広がる。この様子は、前出の1875年7月3日の日記のような次のような一節を想起させる。「空は重く人間の上に下って来て、人間を圧しつける。雨が降る。ゆっくりと一面の霧が下りて来る。人間も風景もすべて自然は、天気の重さを感じているようだ」。また、≪ブルターニュの海≫は、あまり明るくはないが繊細な色調で描かれており、海に浮かぶ1艘の小さな帆船がブルターニュの海の静けさを表わしている。ルドンの1885年6月12日の日記には、船についてこう記されている。「美しくやさしい船よ、永遠に波に揺られるままに、親しみのある港に浮かんでいる。お前の長い帆柱と細い帆綱は、霧のかかった空に線を描く。そして風の息吹と波のリズムが、やわらかな和声のように心をゆさぶる」。(『モネと画家たちの旅』図録、2007)