ゲストリレーション・ミュージアムショップスタッフ募集のお知らせ【パート・アルバイト】
18歳でミュンヘンに渡り、当時人気を博していた諷刺雑誌『ジンプリツィシムス』の挿絵画家として契約したころから、パスキンの素描家としての才能が開花する。軽妙な線描を駆使し、対象となる人物の姿を生き生きと表わしたが、その表情の描写からは人物の内面にまで肉迫するかのような画家の鋭い観察眼をうかがうことができる。しかし、彼の天性の観察力と素描力、その表現の自在さが、そのまま油彩によって再現されるにはかなりの年月を要した。薄塗りの淡い色彩による明暗表現と、震えるような細い輪郭線で裸婦や少女の姿を優しく描き出すといった彼独特の油彩画は、晩年になってようやく確立されたのである。
本作品は、画面左上の書き込みからパスキンが40歳のとき、旅行先の南仏の町カシスで描かれたことがわかる。ここに描かれている詩人であり美術評論家であったマルセル・ソヴァージュは、『ヴラマンク その生涯とメッセージ』(1956年)の著者としても知られるが、パスキンとの関係については詳らかではない。マルセルとその妻ルネは、ときどき仮面舞踏会を開いて友人たちを招待したという。よほど親しかったのか、パスキンはこの夫妻の肖像画を数点残している。