静物

  • 作家名 アンドレ・ドラン
  • 制作年 1932年頃
  • 技法・素材 油彩/カンヴァス
  • サイズ 38.0 x 46.1 cm
「われわれにとって火の試練だった。[…]たしかに当時のわれわれの不安に、みんなが目にしているものとは別のものを描きたいとのわれわれの欲求に、漠然とした原因があった。[…]色彩はダイナマイト管となった。色彩はその光をぶちまけねばならなかったのだ」と、のちに振り返ったドランのフォーヴ時代は、1904年から1906年までの約2年間にすぎなかった。この時代の作品は、固有色を無視し対象を大胆にデフォルメしたものであったが、ドランは1907年以降、古典主義への関心から、厳格な構築性に支えられた絵画空間の獲得をめざすようになる。1920-1930年代には、おもにイタリア・ルネサンス期の人体描写を模範とし、立体感や量感の表出を意識した人物画や、明暗表現に重きをおいた静物画を数多く描いた。本作品は、17世紀のテネブリズム(明暗の対照で劇的な効果を出す描法)や18世紀の画家シャルダンの静物画を髣髴とさせる。葡萄や洋梨といった果物のハイライトにみられる厚塗りのすばやい筆致や、ひと筆で描いた陰影部の筆さばきなどから、画家の高度な技量がうかがえる。