ゲストリレーション・ミュージアムショップスタッフ募集のお知らせ【パート・アルバイト】
1901年にル・シダネルは、ロダンにすすめられて彼が学生時代を過ごしたボーヴェを訪れたとき、そこから20キロメートルほど離れたジェルブロワという小さな町を見出した。バラが咲き誇るこの地に画家は一目で魅了された。
町はずれの傾斜地に建つ家と広大な土地を入手し、画家は自らの手でデザインしたアトリエ、テラス、つる棚を建て、庭園を造り、夏のあいだ避暑を愉しむための緑の理想郷を創り上げた。ひなびた中世の建築をおもわせる、植物で形づくられたアーチ窓の向こうに、明るい眺望が広がるテラスが本作品の舞台である。人の気配を漂わせる無人の庭園は、ル・シダネルが好んだテーマであった。世紀末のパリで象徴派のグループに接し、画家は象徴派の小説家ロデンバック(1855-1898)の『死都ブリュージュ』(1892年)の舞台となったベルギーの古都を訪れている。以来、ヨーロッパ中の都市を巡るのだが、さまざまな古都の面影がジェルブロワの庭園に投影されているのであろう。
このテラスでは、点描法で描かれた樹木が初夏の日差しにきらめき、地面にこぼれ落ちた花びらが木漏れ陽を受けて光を放っている。苔むした石造りのテーブルに捧げられたバラは、毎年朽ちては復活する生命の神秘を示しているようである。ジェルブロワでは、ル・シダネルが創始したバラ祭が現在も続いている。