この作品は「すばらしい乳白色」と絶賛された独自の下地の技法を活かした表現により、フジタがパリで名声を獲得した時期に制作されました。肌の質感を思わせる滑らかな乳白色の下地には、細くやわらかな輪郭線が引かれるとともに、陰影を表すぼかしと淡い彩色が施されており、フジタの技法の特徴をよく示しています。子どもや小動物など、フジタが生涯にわたり好んだモティーフを描いたきわめて早い時期の作品で、猫を胸に抱く少女の仕草は子どもらしい愛らしさを感じさせる一方、正面を見据えるまっすぐなまなざしと固く結ばれた口元からは、フジタの描く少女像らしい静かな威厳が伝わってきます。本作品はフジタが亡くなった1968年に、東京と京都で開催された「藤田嗣治追悼展」において代表作として出品されました。