12月2日(月)~13日(金)まで臨時休館いたします
ドームが手本と仰いだエミール・ガレに「フランスの薔薇」の連作がある。「ロサ・ガリカ」(仏名: ローズ・ド・フランス)を主題にした装飾で、普仏戦争(1870-1871年)の敗北によってフランスが失った領土への愛惜の念を薔薇に託したものである。戦争前、ロレーヌ地方ではロサ・ガリカは、フランス領だったサン=カンタン山(軍事的に重要な場所に位置する小高い山)にしか自生していなかった。その山は戦後ドイツ領に変わり、簡単に近づくことは出来なくなった。それでも「『フランスの薔薇』と呼ばれる野生の薔薇は、戦場で流された血のように赤い花を咲かせ続ける」と、ガレは訴えた。そのような業績をドームが知らないはずはなかった。ドームの薔薇の連作も、ガレに刺激を受けて生まれた可能性は否定できない。(『名作選』 2007)