徽章文杯

  • 作家名 ドーム兄弟
  • 制作年 1892-1893年
  • 技法・素材
  • サイズ 高10.6 径9.4 cm
露仏同盟締結に際してフランスを訪れたロシア代表団、特にロシア艦隊に対する公式歓迎行事の記念品として製造された酒杯。透明地をエッチングで削ってロレーヌ十字や渦巻きを陽刻し、双頭の鷲(帝政ロシアの紋章)、アザミ、ロレーヌ十字、ロレーヌの鷲(ロレーヌ地方のシンボル)、船などの錨などをエナメルと金彩で描いている。アザミの花に寄せてエナメル彩で銘文"Qui s'y frotte s'y pique"(君子危うきに近寄らず)を描き、脚台のステム(柄)にエッチングで"Plus penser que dire"(言説よりも思慮を)を刻んでいる。普仏戦争敗北によってアルザス・ロレーヌ地方をプロシアに割譲したフランス側の国民感情をいい表わす慣用句「いつもそれを考える、決して口にはださないが」を踏まえた言葉で、露仏同盟のみならず旧フランス領のアルザス・ロレーヌ地方に関連させた内容となっている。露仏同盟は1891-1892年に外交交渉が行われ、1893-1894年に軍事協定が結ばれた。(『名作選』 2007)