ゲストリレーション・ミュージアムショップスタッフ募集のお知らせ【パート・アルバイト】
1881年の第6回印象派展にドガは、人口の髪に絹のリボン、バレエのチュチュを着け、トウシューズを履いた《14歳の小さな踊り子》を出品している。この作品だけが唯一、彼の生前に公開された塑像であった。少女の顔立ちや人体のプロポーションを、美しく理想化することなく写実的に表現し、実物の衣装をつけ、一部は着彩まで施されていたこの作品は、異様で醜いものとして批評家たちの酷評を浴びた。しかし現在では、ドガが目指していた写実主義がもっとも直接的に表現されている作品として高く評価されている。 ドガは、1880年代の半ば頃より、油彩画やパステル画と同様、踊り子、裸婦、馬などを主題とした、蜜蝋や粘土による小さな塑像を数多く制作するようになる。彼はこのような塑像を、完成作として発表することは考えていなかったため、アトリエのなかで、つくっては壊すといった作業を繰り返した。ドガの死後、壊れかけた塑像やばらばらの破片がアトリエで発見され、それらは修復されて1921年までに72点が鋳造された。そのうちの38点は踊り子の像である。これらの塑像は、ドガが絵画や素描の制作と同時に行っていた、モデリングによる立体のエスキースのような作業で生み出されたのだった。しかし、この作品にみられるように、ドガの彫刻は、どの角度から見ても均整のとれた美しいプロポーションと人体の軽やかな動きを表現しており、絵画にとどまらない彼の造形の才能を示している。(『ドガ、ダリ、シャガールのバレエ』図録、2006)