〈小さな職人たち〉
フジタがパリで働く貧しい人々に向けたあたたかいまなざしは、〈小さな職人たち〉をはじめとする絵画だけでなく、彼の文章からも感じられる。フジタはその著書『巴里の横顔』(1929年)や『巴里の昼と夜』(1948年)で、パリの街でよくみられる典型的な人物を取りあげ、彼らの特徴について詳しく語っている。そのなかから〈小さな職人たち〉の連作に描かれている職業に触れた言葉を、図版に添えて掲載した。
……この頃日本で、評判になっているマネキンは、パリの裁縫店へ行くと、どんな店でも必ず四五人は抱えてある。(中略)店にいる時はきれいな着物を着ているが家へかえる時は汚い着物になる。とは言っても裁縫店だけに、古いのを貰うから外の女よりも、少しばかりきれいである。
-『巴里の横顔』184頁