読書する少女

作家名
国吉康雄
制作年
1921年(大正10)
技法・素材
油彩/カンヴァス
サイズ
76.5 x 63.8 cm

国吉康雄 《読書する少女》 1921年(大正10)

作品解説

アメリカに渡り絵画を学び始めた頃の国吉は、ルノワールやセザンヌに影響を受けた作品を制作していたが、1920年頃からキュビスムやアメリカ先住民によるフォークアートに影響を受けながら、独自の幻想的世界を形成した。本作品は、アメリカの開拓地らしい荒野に点在する集落を舞台としながらも、ヨーロッパからもたらされた前衛芸術や、ポスト印象派の画家たちを経由して間接的に影響を受けた日本美術の要素など、さまざまな試みを導入しながら制作されている。
 前景の白い服を着た少女と左の木は、浮世絵のように大きく強調して描かれ、画面の中にもうひとつのフレームを形づくり、奥にひろがる空間へと視線を誘う。点在する木々の緑や花が素朴さを伝えつつも、画面全体の色調は暗く抑えられたまま、少女の表情や同時期の国吉作品に頻繁に登場する白い家、そこから伸びる道と山などが舞台を形づくる。それぞれの要素はキュビスムを思わせる幾何学的な線の連なりと単純な陰影を施された塗りによって表され、窓の外に広がる空間のなかに集積している。モティーフを縦に積み上げるように配置した山水画のような遠景の空間表現には、西洋絵画における伝統的な線遠近法によらない新たな描法の展開がみられる。後に幾度も画風を変えていく国吉は、この頃、さまざまな影響を取り入れながら、自らの芸術のありかたを模索している。

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