〈小さな職人たち〉
フジタがパリで働く貧しい人々に向けたあたたかいまなざしは、〈小さな職人たち〉をはじめとする絵画だけでなく、彼の文章からも感じられる。フジタはその著書『巴里の横顔』(1929年)や『巴里の昼と夜』(1948年)で、パリの街でよくみられる典型的な人物を取りあげ、彼らの特徴について詳しく語っている。そのなかから〈小さな職人たち〉の連作に描かれている職業に触れた言葉を、図版に添えて掲載した。
……酒と言えば、私がパリのモンスーリに住んでいた時分、三階の画室のなかと地下階の応接間のなかとこの二つにバーを作って、毎週一度ずつお客を呼んでいたものですよ。四五十人の客が、その都度、ウィスキー十本、ジン十本三鞭酒(シャンパン)四五十本位御馳走しました。
-『巴里の昼と夜』168頁