リーベの家

作家名
東山魁夷
制作年
1963年(昭和38)
技法・素材
紙本彩色/額装
サイズ
60.4 x 81.2 cm

東山魁夷 《リーベの家》 1963年(昭和38)

作品解説

東山の画業はたいへん険しい道程であった。青年時代は家庭環境に苦悩し、画壇にも認められず長い不遇のときを過ごした。1933年(昭和8)、東京美術学校研究科を修了した25歳の東山はドイツに留学し、ゲーテやノヴァーリスなどのドイツ文学やモーツァルトなどの音楽に親しみ、北部ヨーロッパの精神性を体得する。その後、作品が称賛されるようになり、画家としての地位を固めた後も、彼はその謙虚で物静かな性質を変えなかった。1962年(昭和37)、54歳の東山は妻とともに北欧への写生旅行に出かけた。それはまさに初心に立ち戻るための旅であった。 本作品は、その北欧旅行で立ち寄ったデンマークで描かれたものである。「リーベ」という古い町を訪れた東山は、そこがまるで童話の世界であるかのように感じたようだ。描かれた民家も、どこかほのぼのとした風情をただよわせている。しかし、この家の外壁から石畳、空にいたるまでが北欧の凍えるような空気に包まれており、その澄んだ青色が心に残る。彼はとりわけこの「青」という色に魅せられていた。青に彩られ、静謐さを湛えた彼の絵画作品は、鑑賞者の心に涼やかな微風を吹き込む。「青は精神と孤独、憧憬と郷愁の色であり、悲哀と沈静をあらわし、若い心の不安と動揺をつたえる。青は又抑制の色であって、絶えず心の奥に秘められて、達することのできない願望の色である。それは頽廃と死への誘惑にも傾く」と東山は語っている。北欧を旅したことにより、画家はこの「青」のヴァリエーションを豊かにしていった。

ポーラ美術館の収蔵する東山魁夷のコレクション