12月2日(月)~13日(金)まで臨時休館いたします
本作品には、どこまでも続くような青紫色の平原で羊たちが草を食む様子が描かれています。白い羊のなかには、平原の青紫と美しいコントラストをなす黄色の羊がまざり、作品の幻想的な雰囲気を一層際立たせています。一方、一心に下を向く羊たちのなかで中央の1頭だけがじっとこちらを見つめています。画家や鑑賞者の存在を暗示するようなこの羊は、画面に現実感を与えているといえるでしょう。作品名の「?(トウ)」が「夜が明け染める」「ほの暗い」様子をあらわすことから、現実の時間や空間を超越したようなこの光景が、実は夜明けの平原を描いたものであることがわかります。
本作品は、1978年(昭和53)にイラン、トルコ、エジプトを旅行した際に目にした、羊を放牧しながら草原を移動して暮らすイランの少数民族カシュガイ族の羊たちに着想を得ていると思われます。