エデンの園のエヴァ

作家名
アンリ・ルソー
制作年
1906-1910年頃
技法・素材
油彩/カンヴァス
サイズ
46.5 x 61.4 cm

アンリ・ルソー 《エデンの園のエヴァ》 1906-1910年頃

作品解説

ジャングルに裸体の人物が出現するルソーの絵画は、本作品を含めて6点ほど現存する。それぞれが固有の場(トポス)に置かれた女性像であり、一つとして同じ雰囲気を纏う裸体はない。これはルソーが女性像を描き慣れていなかったという理由ではなく、おそらく絵画史上、もっとも強烈な女性像の一つに数えられる《蛇使いの女》(1907年、オルセー美術館蔵)に描かれた漆黒の肌の女に代表されるように、作品ごとにルソーが空想を膨らませ構想したコンセプトに沿い、唯一無二の女性像が創造されたからである。そしてそのうちの2点がエデンの園に住まう原初の女「エヴァ」と名付けられている。 本作品のエヴァ像は、それまでの宗教画に見られる「エデンの園」(paradis)の住人としてよりも、むしろ原生林、あるいは処女林(for?t vierge)を擬人化した処女エヴァとして表わされている。巨大な満月が絵画全体を透徹した光で浸し、ゆうに十種を越える奇妙な植物が複雑に絡み合う密林で、腰まで髪を垂らした野趣あふれる姿の女が大きな花を手折っている。この無垢なるエヴァは、野性というファンタジーの迷宮へと文明人の好奇のまなざしを誘う役割を果たしている。(『アンリ・ルソー:パリの空の下で』図録、2010年)