01 展覧会について
ポーラ美術館は、ライアン・ガンダーの最新作をご紹介する展覧会を開催いたします。
ライアン・ガンダー(1976年生まれ)は、英国サフォークを拠点に活動するアーティストです。絵画、彫刻、映像、テキスト、VRインスタレーションから建築、出版物や書体、儀式、パフォーマンスに至るまで、幅広く多元的な作品と実践を通して、ガンダーは芸術の枠組みやその意味を問い直しながら国際的な評価を確立してきました。また、自身の制作に加えて、展覧会のキュレーション、大学や美術機関での指導、また子どもたちを支援する活動にも熱心に取り組んでおり、数多くの書籍の執筆・編集、テレビ番組の制作・出演を通じて芸術や文化の普及にも携わるガンダーは、現代におけるアーティスト像を更新しています。
「一種のネオ・コンセプチュアルであり、特定の様式をもたないアマチュア哲学者」と自称するガンダーは、日常の中に潜む物語や多層的な意味を、知的な遊び心と鋭いユーモアを交えながら表現しています。その作品においては、不在や死、不可視、潜在性といったテーマが、現実と虚構が複雑に絡み合う中で展開されます。
人間の言葉を話すカエル、読めない時計や仮想の国旗、ある兄弟の偽りの歴史など、ガンダーの作品は極めて具体的でありながら、捉えどころのない神秘に満ちています。「アートの目的はコミュニケーションではなく、触媒として曖昧さを提供すること」と作家が語るように、作品の意味は固定されていません。鑑賞者の働きかけ―― 解釈と連想のプロセスによって、出会いのたびに新たな物語が創造されるのです。
You Complete Me, or I see things you canʼt see (A Frogs Tale), 2025
Courtesy the artist and TARO NASU, Tokyo. Photo: Ryan Gander Studio
02 みどころ
東京、大阪、岡山、福岡など、これまで日本各地で展覧会を開催し、国内でも高い人気を誇るライアン・ガンダー。ポーラ美術館での展覧会では、館内のさまざまなスペースで、全18点におよぶ作品の数々をご紹介します。その大半が日本初公開の新作であり、本展のための新作も多数。人気作家の現在地をご覧いただける展覧会です。
Closed systems, 2024
Courtesy the artist and TARO NASU, Tokyo. Photo: Ryan Gander Studio
ガンダーの「アニマトロニクス」シリーズには、まだ幼い彼の子どもたちの声が使用されています。長く難解な文章をきちんと読み切る子どもたちと作家の間には、どのような信頼とコミュニケーションがあったのでしょうか?また、地名の綴りをそのままカンヴァスに写した絵画作品は、各地で撮影した写真の整理のため、ガンダーの父親が記した手書き文字を抜き出して描かれています。家族との関係や思い出が、アート作品として新たな位相を見せています。
シカやイノシシ、鳥、リスやムササビなど、豊かな植生を誇る箱根の森には多種多様な動物たちが暮らし、生態系をなしています。生命について、共生について……動物たちは人間に多くを教えてくれる存在です。ポーラ美術館での展覧会のためにガンダーは、新たな動物たちを生み出しました。館内のさまざまな場所に棲みついた、不思議な動物たちを探しにいきましょう。
You are repetitive and productive but you dream of being free, 2025
Courtesy the artist and TARO NASU, Tokyo. Photo: Ryan Gander Studio
Centred on the periphery, 2023
Courtesy the artist and TARO NASU, Tokyo. Photo: Misako Misako
03 作家プロフィール
ライアン・ガンダー
1976年イギリス、チェスター生まれ。ロンドンおよびサフォーク在住。近年の主な個展に、ヘルガ・デ・アルヴェアール現代美術館(スペイン、カセレス、2024年)、福岡醤油ギャラリー(岡山、2023年)、東京オペラシティアートギャラリー(2022年)、ノリッジ美術大学イースト・ギャラリー(イギリス、2022年)、スペースK(ソウル、2021年)、クンストハレ・ベルン(スイス、2019年)、大宰府天満宮(福岡、2017年)、国立国際美術館(大阪、2017年)、アスペン美術館(アメリカ、2016年)、モントリオール現代美術館(カナダ、2016年)、バンクーバー現代美術ギャラリー(カナダ、2015年)、オーストラリア現代美術センター(メルボルン、2015年)など。第10回リバプール・ビエンナーレ(イギリス、2018年)、第21回シドニー・ビエンナーレ(2018年)、ドクメンタ13(ドイツ、カッセル、2012年)、第54回ヴェネチア・ビエンナーレ(2011年)ほか国際展にも参加多数。2017年、現代美術への貢献により大英帝国勲章を受勲。2022年には、英国美術界の権威であるロイヤル・アカデミーの正会員(彫刻部門)に選出されている。
Courtesy of the artist. Photography by Kazushi Toyota_IG. © Ryan Gander.
04 関連プログラム
決定次第、お知らせいたします。
05 展覧会概要
ライアン・ガンダー:ユー・コンプリート・ミー
Ryan Gander: YOU COMPLETE ME
- 会期
2025年5月31日(土)~11月30日(日)会期中無休
- 会場
ポーラ美術館 アトリウム ギャラリー、展示室4、ロビー ほか
- 主催
公益財団法人ポーラ美術振興財団 ポーラ美術館
- 協力
TARO NASU
- 企画
鈴木幸太(ポーラ美術館主任学芸員)