観ルドン

2018/06/27

ルドンと現代美術

本展では、ルドンと同様に神秘や幻想をテーマとして作品を制作する3人の現代作家をご紹介します。ルドンが生きた19世紀末という時代は、急速に産業化・情報化が進み、人々が新しい技術の恩恵を享受しながらも、どこか不安や閉塞感を感じていた時代でした。その空気のなかでルドンが感じ取り、表現した幻想の世界は、現代を生きる作家のなかにも息づいています。

柄澤齊 Karasawa Hitoshi

柄澤齊は木口木版という技法にこだわり、版画の世界を切り拓いてきた作家です。
白黒の画面のなかで、聖書や文学作品に想を得て幻想的な世界を作り出してきました。虚構を織り交ぜながら敬愛する歴史上の人物を描く「肖像」シリーズのなかでも、作品のなかで佇むルドンの姿をとり上げています。

柄澤 齊
1950年、日光(栃木)―
Karasawa Hitoshi
1950, Nikko (Tochigi) -
ビュランを用いた木口木版によって作品を制作する版画家。初期には聖書に題材を得て神秘的な場面を描き、次第に木口木版の特性を活かして身近なモティーフを細密に描写しながら幻想的な場面を作り上げる。また1981年より、ルドンを含む画家たちをはじめ、詩人や音楽家の姿を、彼らの芸術世界のなかで表現した「肖像」シリーズを制作している。

イケムラレイコ Ikemura Leiko

ヨーロッパに渡り異国の伝統との相克を経験したイケムラレイコは、ルドンと同様に海を想像の原点として神秘的な世界を創り出しました。彼女の代表的なモティーフである眠りにつく少女は、ルドンの瞑想する人物を思わせます。

イケムラレイコ
1951年、津(三重)―
Ikemura Leikoi
1951, Tsu (Mie) -
1972年よりスペインに渡り、1979年からはスイス、1983年にはドイツに移り、現在はベルリンとケルンを中心に活動を行う。1991年よりベルリン芸術大学教授。横たわる少女像やうつろいゆく自然の情景をモティーフに、生と死、理性と本能、西洋と東洋という二項対立の境界を曖昧にする作品を制作している。ヨーロッパを拠点にしているイケムラは西洋美術との関係性に取り組み、2004年には「ルドンとイケムラレイコ」展(ミハエル・ハース・ギャラリー、ドイツ)を開催している。

鴻池朋子 Konoike Tomoko

独自のキャラクターを主人公に詩的な物語を紡ぎ、精神的な世界と向き合ってきた鴻池朋子。彼女の作風は2011年の東日本大震災を契機に劇的に変化しました。動物の皮や粘土など様々な「素材/物質」と向き合い、民俗学の視点をとり入れることで人間の自意識を超えた根源的な世界を切り拓いています。

鴻池 朋子
1960年、秋田 ―
Konoike Tomoko
1960, Akita -
玩具や雑貨の企画とデザインの仕事に携わった後、1998年より絵画、彫刻、アニメーションや大型のインスタレーションを駆使した作品制作をはじめる。鉛筆を用いて描いたキャラクターを通して、独自の物語世界を紡ぎ出す。2011年に発生した東日本大震災を転機として、「素材/物質」への接触を起点として制作をすすめ、牛の皮や粘土を素材にした作品を手がけている。近年は民俗学やおとぎ話研究との交流を通して新たな作品世界を開拓している。