展覧会について

2019/03/01

展覧会構成

Ⅰ 世界のひろがり ー 好奇心とノスタルジー

19世紀のフランスでは、外交や政治、思想や精神性、科学や技術の発達による交通手段の発展からも世界がひろがり、画家たちが描く世界も拡張されました。北アフリカの異文化を描いたドラクロワや文明化されていないタヒチを訪れたゴーガンの制作には、未知なる世界の風景や風俗への好奇心(キュリオシティ)が根底にあります。また、各地を旅して自然から受けた印象や感覚を描いたコローの作品は、都市化の進んだフランスでは美しい自然へのノスタルジー(郷愁)を表現したものと捉えられました。

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Ⅱ 都市への視線 ー パノラマとポートレート

産業革命の結果として誕生した都市の中でも、パリは「19世紀の首都」として、現代都市の原型となっていきました。その背景には1853年からのパリ大改革がありましたが、印象派の画家たちはこの変わりゆくパリを、しばしば俯瞰的視点で都市のパノラマとして描いています。また同じ時代に生きる人々も、彼らの重要な主題となりました。
第二章では画家たちの描いた都市風景と、時代のポートレートとしての人物画を対比的に紹介し、広がる都市とその構成要素としての人々への画家の視線を探ります。

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Ⅲ 風景のなかのかたち ー 空間と反映

ブーダン、シスレー、モネは水辺の風景を好んで描きました。水辺を描いた風景画は、伝統的に低い位置に水平線を置き、空の面積を多く取ることで空間の広がりをあらわしてきました。しかしモネは、画面上部に水平線を置いた斬新な構図で描き、晩年には靄(もや)や霧の効果、水面の反映に関心を抱いて、形態と色彩が渾然一体となった二次元的な世界を創り出しました。本章では水辺の風景に焦点を当て、画家の記憶に刻まれた風景の中のかたちを浮き彫りにします。

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Ⅳ 風景をみたす光 ー 色彩と詩情

19世紀後半、モネら印象派の画家たちが、それまでにない明るい色彩と素早い筆致によって目の前で刻々と移ろう光を記録しました。続いてスーラやシニャックら新印象派の画家たちは色彩理論を研究して点描技法を生み出し、光あふれる画面を描きます。こうしたあざやかな色彩と自由な筆致は、フォーヴィスムなど次世代の動向へとつながっていきました。画家たちが新しい表現を駆使して描いた、美しい風景とそれを照らし出す光の表情をご紹介します。

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Ⅴ 記憶への旅 ー ゴッホ、セザンヌ、マティス

絵画には、画家が意図的に描いた形態や色彩だけでなく、手作業であるからこその筆跡や偶然的な傷跡などの痕跡という「記憶」が残されています。そして、むしろそこにこそ作家の個性や制作へのこだわりがあらわれます。
この章ではゴッホ、セザンヌ、マティスの作品を取り上げて詳細に観察し、さらに科学調査や文献調査、現地調査を加えることで、作品に込めた、あるいは暗に込められた画家の想いとその「記憶」にせまります。

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