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2019/03/19

写真に残されたマティスの制作の秘密 - マティス《ラ・フランス》

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マティスは、三次元の世界を、カンヴァスや紙、板など、二次元の絵画の世界に表現してきた西洋の伝統に逆らい、絵画の二次元性を推し進めた20世紀を代表する画家のひとりである。

この作品は椅子に座った女性を描いたものだが、黄色に塗られた床や壁、天井が識別できない平面的な室内の中で、座っているはずの女性も直立しているように見える。赤や黄、青などのあざやかな色彩による調和が、奥行きのない平面のなかで響きあっている。

更に、クローズアップしてみると、筆ではできない不自然な傷や下地の露出などがみえる。これらの傷の原因は、参考写真をみると明らかになる。

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この写真は、マティス自身が主体的に開催したパリ・マーグ画廊での1945年の展覧会の展示風景。
同じ作品が9枚並んでいるように見えるが、左右4枚ずつの計8枚は、白黒写真を額装したもので、制作過程の写真と完成作を一緒に展示している。

マティスは、自身の作品が、感覚的に素早く即興で描いたものと評されることが多かったことに対し、試行錯誤を経て、構成的に描いたものであることを示すためにこのような展示を試みた。
また、当時の若い画家たちが絵画制作の基本を怠っていたことに対する教育的配慮もあった。