01 展覧会について
HIRAKU Projectは、過去にポーラ美術振興財団の助成を受けた作家を紹介する展覧会シリーズです。第17回目となる今回は、細かく砕いた色とりどりの石を組み合わせて画面をつくる、伝統的なモザイク技法を用いる気鋭の若手作家ヤマダカズキを紹介します。
油彩画に比べて陰影や細密な描写を持たないモザイクの「解像度の低さ」に着目した作家は、それを地域に伝わる民話や神話の不確かさと重ね合わせながら、曖昧さを含む伝承を石によって可視化する作品を制作してきました。本展では、ひたすら石を割り続けるというモザイク制作における反復行為を、山に住む精霊によって森に反響する「こだま」に喩え、これまでの代表作と、箱根にまつわる伝承を取り上げた過去最大の最新作によって会場を構成します。明瞭さや再現性ばかりを追い求める現代において、静かに鳴り響く石の声は、我々に何を問いかけるのでしょうか。
02 作家プロフィール
ヤマダカズキ
1995 年、熊本県⽣まれ。東京藝術大学にてモザイク技法を学ぶ。2021 年、神山財団芸術支援プログラム助成第 8 期奨学⽣。2023 年に、ポーラ美術振興財団在外研修員(イタリア)として初期キリスト教美術の遺構が多く残るイタリアの都市ラヴェンナで研修。石やガラスなどの耐久性の⾼い素材を使用することで、古くから伝わる魅⼒的な民話を過去から未来へ引き継ぎたいという動機のもと、日本各地の民話や伝承といった土地固有の記憶を、モザイク作品として記録、保存することをテーマに活動している。民話の持つ寓意や不思議さ、時にユーモラスな要素に着目し、伝統的な技法と現代的な感覚を融合させた表現を探究している。近年の主な個展に「石のカタリベ」ギャラリーマルヒ(東京、2025 年)など。主なグループ展に「100×100 Mosaico」ラヴェンナ市立美術館(イタリア、2024 年)など。
撮影:小沢朋範
03 作品紹介
《阿蘇に降る霜》2022年
石、セメントモルタル、阿蘇火山灰
162.0cm×130.3cm
《箱根山の天邪鬼》2025年
石、セラミックタイル、ズマルト、セメントモルタル
116.7cm×91.0cm
《旭志村の話》2022年
石、ズマルト、金箔ガラス、セメントモルタル
89.0cm×89.0cm
《リョウサイ御前とイタチ》2025年
石、セメントモルタル
100.0cm×72.7cm
04 展覧会概要
HIRAKU Project Vol.17 ヤマダカズキ「地に木霊す」
- 会期
2025年12月13日(土)~2026年5月31日(日) 会期中無休
- 会場
ポーラ美術館1F アトリウム ギャラリー
- 観覧料
無料
- 主催
公益財団法人ポーラ美術振興財団 ポーラ美術館
- 会場デザイン
tandem
- 企画
東海林 洋(ポーラ美術館学芸員)