杉山寧《水》1965年(昭和40)
麻布彩色/額装 147.3 x 227.3 cm
杉山寧《洸》1992年(平成4)
麻布彩色/額装 180.0 x 220.0 cm
ポーラ美術館初の日本画展となる本展覧会では、収蔵作品の中から約120点を1期・2期に分け、当館の日本画コレクションを総覧いただきます。なかでも43点を数える杉山寧(1909 - 1993)の絵画コレクションは日本最大級のもので、見どころのひとつです。
展覧会では、日本画の近代化に尽くした横山大観(1868-1958)をはじめとして、叙情的な作風でヨーロッパ風景を描いた東山魁夷(1908-1999)、人間の精神性を追究した山辰雄(1912-2007)、写実と抽象を組み合わせた構図や厚塗りのマティエールを追究した杉山寧、仏教伝来とシルクロードをテーマに描き、文化財保護にも尽力した平山郁夫(1930-2009)などの作品を通して、現代日本画家の造形上の実験と今後につながる可能性を、今あらためて捉えなおすことを企図しております。
出品作家: 横山大観、川合玉堂、小林古径、安田靫彦、前田青邨、福田平八郎、徳岡神泉、山本丘人、東山魁夷、杉山寧、山辰雄、加倉井和夫、横山操、平山郁夫 (生年順)
展覧会は4つのセクションに分かれ、現代日本画への序章となる第1部「横山大観とその周辺」、コレクターが最も力を入れて収集した杉山寧を特集する第2部「杉山寧『純粋絵画』への道」、第3部「東山魁夷と日本画の叙情」、第4部「平山郁夫 源流を求める旅」から構成されます。
※作品は1期・2期で展示替をいたします。それぞれの展示期間は下記日程のみとなりますので、ご注意ください。
2期 2010年6月11日(金)〜2010年9月5日(日)
第1部|横山大観とその周辺−現代日本画へ至る道
横山大観《不二霊峰》1940年代
紙本彩色/額装
「日本画における『写実』とは何か?」明治期に「日本画」という言葉が生まれて以降、画家たちは洋画との確執の中で、この問題に対峙してきました。横山大観(1868-1958)が試みた没線描法は、伝統的な日本画に欠かせなかった輪郭線を排除し西洋の空気遠近法に倣ったもので、見慣れない描写に抵抗をもった評者から「朦朧体」と揶揄されます。
小林古径(1883-1957)、安田靫彦(1884-1978)、前田青邨(1885-1977)は、日本画における「新古典主義」を確立した画家として、主題、技法のいずれにおいても伝統を踏襲する一方で、大胆に分断された構図や抽象表現の萌芽をみせ、近代的な展示空間にふさわしい日本画のモダニズムを模索しました。
横山大観《山に因む十題のうち「霊峰四趣」秋》1940年(昭和15)紙本彩色/額装
小林古径《柿》1934年(昭和9)
絹本彩色/額装
第2部|杉山寧「純粋絵画」への道
杉山寧《舞》1968年
(昭和43)麻布彩色/額装
杉山寧《薫》1975年(昭和50)紙本彩色/額装
杉山寧《究》1981年
(昭和56)麻布彩色/額装
杉山寧《沙》1990年(平成2)麻布彩色/額装
東京美術学校在学中に帝展(帝国美術院展覧会)に入選し、さらに美校を主席で卒業した杉山は、新進気鋭の若手画家として華々しく画壇にデビューしました。そして厚塗りの堅牢な画肌を編み出し、抽象的な形態を主題として、伝統的な「日本画」の概念を覆すような制作を始めます。やがて杉山は、色面構成のように抽象的なモティーフを組み合わせた背景に、細密に描写した花鳥を配する独自の画風を打ち立てました。

特集|杉山寧とその周辺
【特集1】 日本画の革新−瑠爽画社の仲間たち:山辰雄、山本丘人
「瑠爽画社」(るそうがしゃ)とは、東京美術学校で松岡映丘(えいきゅう)門下にいた若手画家たち、杉山寧、山辰雄(1912-2007)、山本丘人(1900-1986)らが卒業後の1934年(昭和9)に結成した団体で、歴史風俗画主体の大和絵の伝統に縛られない「新日本画の創作」を期待されました。
山辰雄《道》1970年(昭和45)
紙本彩色/額装
山辰雄《夜明けの時》1972年(昭和47)
紙本彩色/額装
【特集2】 日本画における抽象−徳岡神泉、福田平八郎にみる
ともに京都を活動の中心としていた徳岡神泉(1896-1972)と福田平八郎(1892-1974)は、草花や小動物など日本画の伝統的な画題を、なかば現実から遊離したような背景のパターン上に配置し、「半抽象的」といわれました。
徳岡神泉《池》1968年(昭和43)
紙本彩色/額装
福田平八郎《鴛鴦》1963年(昭和38)
紙本彩色/額装
第3部|東山魁夷と日本画の叙情
「国民的画家」と呼ばれるほど日本人に愛されている 東山魁夷(1908-1999)。その名前を聞いただけで、北欧の針葉樹の緑や、湖畔の情景、白馬のいる風景など具体的な作品のイメージが浮かぶでしょう。その作品は、まるでおとぎ話の一シーンのように叙情的であり、ありのままの自然を超越した崇高さを獲得しています。東山は初めて海外にまとまった取材を行い、シリーズとしてヨーロッパ風景を描いた日本画家でもあります。
【特別出品 東山魁夷】
展覧会に際し、長野県信濃美術館 東山魁夷館の所蔵品より、本制作の絵画、習作、スケッチ計9点が特別出品されます。(作品保存のため会期中展示替を行い、各期2〜3点ずつの展示となります。)
東山魁夷《リーベの家》
1963年(昭和38)紙本彩色/額装
東山魁夷《緑の湖畔》
1991年(平成3)紙本彩色/額装
第4部|平山郁夫 源流を求める旅
1945年(昭和20)8月6日、中学三年生であった平山郁夫(1930-2009)は、広島市で原子爆弾の投下にあいました。防空壕にいたため直接の被爆は免れましたが、市内を歩いて避難し多量の放射能を浴びます。東京美術学校に進んだ後も原爆の後遺症に苛まれた平山は、苦悩のなかで、広大な砂漠をさまよう苦行僧―18年にもわたる長旅の末、仏教の原典をインドから中国に伝えた玄奘三蔵―の姿を思い浮かべます。そして「仏教伝来」とシルクロードを舞台にした日本文化の「源流遡行」という主題は、画家のライフワークとして、その後の制作の中心となりました。





