コレクションハイライト

杉山寧 (1909-1993)

杉山寧 《水》

1965年(昭和40) 麻布彩色/額装 147.3 x 227.3 cm


杉山寧は1962年(昭和37年)にエジプトを旅行し、翌年の日展にはエジプトをモティーフとした作品を多く出品しています。この作品《水》は、その旅行から3年後に制作され、第8回日展に出品されました。横2メートルにもおよぶ画面は、全体が砂漠の国エジプトを思わせるザラザラとした絵肌で仕上げられており、杉山寧はこの特殊な質感を実現するために、伝統的な日本画で用いる絹本や紙ではなく、洋画に用いる麻布のカンヴァスを支持体に選択しています。水瓶を頭にのせた黒衣の女性の後ろを流れる大きな青い背景はナイル川でしょうか。エジプトの取材の中で見出したものは、巨大なピラミッドやスフィンクスだけではなく、日常を生きる人間の姿だったのです。


プロフィール

杉山寧は1909年(明治42)に東京の浅草に生まれ、1928年(昭和3)に東京美術学校日本画科に入学。圧倒的なデッサン力で頭角を現し、在学中に帝展(帝国美術院展覧会)で特選を受賞します。首席で卒業した後は、若い画家たちと瑠爽画社(るそうがしゃ)を結成し、新しい日本画の創造に励みつつ、日展への出品を続けました。

1960年(昭和35)以降、杉山の絵画は抽象表現へと傾いていきます。日本画で通常用いられる和紙や絹ではなく、洋画で使うカンヴァス(麻布)を支持体とし、岩絵具に細かい砂などを混ぜて、厚塗りのざらざらとした質感を追究しました。やがて杉山は、色面構成のように抽象的なモティーフを組み合わせた背景に、細密に描写した花鳥を配置する独自の画風を打ち立てます。抽象と写実を融合した二重構造による新たな作品世界は、「造形主義」と評されました。

1962年(昭和37)、杉山は初めての海外旅行に出かけ、エジプトおよびヨーロッパ各地をまわります。その後も中近東を好んで訪れ、ピラミッドやスフィンクス、民族衣装をまとった女性など、旅先で心打たれたモティーフを描いた作品を多く発表しました。

戦後の日本画に新しい領域を切り開き、1970年(昭和45)に日本芸術院会員、1974年(昭和49)には文化勲章を受章するなど数々の栄誉を受けた杉山寧は、1993年(平成5)に84歳で没しました。ポーラ美術館が収蔵する杉山寧の作品43点は、質・量ともに国内最大級のコレクションといえるでしょう。

ポーラ美術館の収蔵する杉山寧のコレクション

ポーラ美術館のコレクションの一部を掲載しています