コレクション企画

「いろどる線とかたどる色」 ドガのパステル、シャガールの水彩、マティスの『ジャズ』

「いろどる線とかたどる色」 ドガのパステル、シャガールの水彩、マティスの『ジャズ』

開催趣旨

ポーラ美術館ではじめて、絵画を「素材」から見る展覧会!

どんな色や線で形をつくるのか――。画家たちは常にその問題に向き合い、画材の特徴を活かして表現をしています。この展覧会では、油彩・水彩・パステルなどの「描くもの」(絵具など)から、紙やカンヴァスなどの「描かれるもの」(支持体)まで、さまざまな画材の特質に注目しながら作品をご紹介していきます。この絵を描くためになぜその絵具を選んだのでしょうか?いつもとちょっと視点を変えて、絵画を「素材」つまり物としてとらえることで、画家たちの探究の軌跡をたどってみましょう。

協力:目黒区美術館 、MCLヨーロッパハウス 、株式会社クサカベ 、バニーコルアート株式会社 、松田絵具株式会社

みどころ

1. ドガ、マティス、シャガール…さまざまな画材で制作された充実のコレクションを一堂に展示!

パステル画や水彩画は光に弱く、油彩画にくらべて環境の変化に弱いため、通常は短期間しか展示できません。本展では、これらの作品に焦点をあて、展示環境をととのえることで、こうした作品の展示を実現しています。
日本最多を誇るドガのパステル画9点やシャガール6点、そしてマティスの『ジャズ』20点など、 当館の“秘められた作品たち”を一堂にご覧いただけます。
2. パステル、油絵具、グワッシュ…絵画を描く絵具について、あらためてご紹介!

絵具も多くの種類がありますが、どういったものからできているのでしょうか。
それぞれの画材が見える展示になっています。

「ラ・メゾン・デュ・パステル」社のパステル714色

ドガが使っていたことで知られているフランスの工房「ラ・メゾン・デュ・パステル」社のパステル714色を展示しています。

3. 鑑賞の手助けになる『見るガイドブック』!

画材の特徴とみどころを「読む」のではなく、「見て」わかるリーフレット『見るガイドブック』を展示会場で無料配布します(なくなり次第終了)。
※ 配布を終了しました。

『見るガイドブック』

画材は何からできているの?絵具の材料がわかります。
「顔料から絵具へ」目黒区美術館蔵

展示構成

1. いろどる線:パステル

絵具は、色のもととなる粉状の「顔料」と、それをつなぐ「媒材」からできています。 パステルはわずかな量の媒材で固めるため、顔料の色あいをそのままに描くことができます。また、筆を使わずに、直接手に持って自由な太さや濃さで輪郭線をひいたり、指でぼかして色面を表現したりできます。

エドガー・ドガ≪休息する二人の踊り子≫
エドガー・ドガ ≪休息する二人の踊り子≫ 1900-1905年頃

踊り子のしなやかなポーズを、素早いタッチで捉えたドガの作品。明るい色彩を好む印象派の画家たちと共に活動しながら、古典的な素描を重んじ、「私は線を用いる色彩画家だ」と語ったドガは、顔料のあざやかさそのままに線をひくことができるパステル画を好んで制作しました。

マネ≪ベンチにて≫
エドゥアール・マネ ≪ベンチにて≫ パステル/カンヴァス 1879年

2. 色をかさねる:水彩

水彩は、水に溶ける媒材を使用した絵具のなかでも、18世紀にイギリスで完成したアラビアゴムを使った絵具です。特に専門家用の水彩絵具は、その性質から「透明水彩」と「不透明水彩」に分けられます。ここで紹介するシニャック、デュフィ、シャガールは、水彩ならではの明るく軽やかな表現を好んで用いた画家たちです。

ポール・シニャック≪レ・サーブル=ドロンヌ≫

ポール・シニャック ≪レ・サーブル=ドロンヌ≫ 水彩、鉛筆/紙 1929年

紙の白い地を活かし、淡い色を並べてゆらめく水面を表現しています。
顔料のすきまから、下層の絵具や紙自体の色が透けて見えるのが、
透明水彩の特徴です。

マルク・シャガール≪プリム祭、壁画のための習作≫

マルク・シャガール ≪プリム祭、壁画のための習作≫ グワッシュ/紙 1916-1917年頃
© ADAGP, Paris & SPDA, Tokyo, 2013, Chagall®
D0396

不透明水彩は、塗った絵具が下の層の絵具や紙を覆うことで、透明水彩に比べてはっきりとした色を出すことができます。シャガールは色彩豊かな作品の制作に不透明水彩のグワッシュを好んで用いました。

3. かたどる色:マティスの切り紙絵

画家たちのなかには、画材や技法を選ぶのではなく、新しく作ってしまう画家もいます。20世紀を代表する画家マティスは、「線と色彩の調和」という問題に生涯をかけて取り組みました。その一つの答えが、グワッシュで色を塗った紙から、まるで線を引くようにハサミでモティーフを切り出し、紙の上に配置する「切り紙絵」です。この方法によってマティスは「線」と「色」とが一体になった表現を実現しました。
このコーナーでは、切り紙絵をもとにした挿絵本『ジャズ』20点をご堪能いただきます。

従来の絵画の技法では、「線」と「色」がバラバラになってしまう―。そんなマティスの悩みを解決したのが「切り紙絵」です。挿絵本『ジャズ』は、切り紙絵をもとに、版の形をくりぬいたステンシルという版画技法を使い、切り紙絵で用いたものと同じ銘柄の絵具を使って制作しました。

アンリ・マティス『ジャズ』より≪サーカス≫≪イカルス≫
アンリ・マティス 『ジャズ』 より
(上) ≪サーカス≫(第2図)、 (下) ≪イカルス≫(第8図) ステンシル/紙 1947年発行