果物のある静物

  • 作家名 ジョルジュ・ブラック
  • 制作年 1924年
  • 技法・素材 油彩、砂/カンヴァス
  • サイズ 19.6 x 65.1 cm
ジョルジュ・ブラックは、パリ近郊にあるセーヌ河畔の小さな村、かつては印象派のクロード・モネもアトリエを構えていたアルジャントゥイユに生まれた。1902年、画家を志してパリに出たブラックは、1905年頃から、マティスたちのフォーヴィスムの運動に加わった。1906年にはかつてセザンヌも描いた南フランスの港町であるマルセイユ近くのレスタックを訪れ、次第にセザンヌに惹かれるようになるとともに、1907年にピカソの《アヴィニョンの娘たち》(1907年、ニューヨーク近代美術館蔵)を見たことが彼の芸術の大きな転機となった。彼は翌年再びレスタックを訪れ、それまでに獲得していた強烈な色彩とうねるような描線を捨て、対象を単純で幾何学的な形態に還元して、それらを画面上で再構築した風景画《レスタックの家》(1908年、ベルン美術館蔵)を描いた。1908年11月、レスタックの風景画はカーンワイラーの画廊で発表され、これらの作品は以前「フォーヴ」(野獣派)という名称を作り出した批評家ヴォークセルによって「キューヴ」(立方体)と評され、それがキュビスムの名の起こりとなった。それ以後、彼はピカソとともに絵画の革新に挑んだ。  1909年、ブラックは制作の中心をそれまでの風景画から静物画に移す。「静物画というのはこの手で触れることができる触覚的な空間が問題となっていて、それは風景画の空間、つまり視覚的な空間の反対と考えてもよいものです」(Vallier, "Braque: La Peinture et nous. Propos de l'artiste recueillis", Cahiers d'Art, no. 1, octobre 1954.)。ブラックは顔料に砂やおが屑を混入することでマティエール自体を変化させ、触覚を喚起する画面を生み出している。本作品でも砂を混ぜた顔料によってざらざらとした表面が形成され、フォークのような先の尖った道具で画面を削って木目の凹凸を表現しており、視覚を通して触覚に訴える画面を形成している。  横幅の極めて広い長方形のカンヴァスは、伝統的に室内の扉の上を飾る絵画によく用いられたもので、1920年代にブラックがしばしば使用していたものである。(『ピカソ 5つのテーマ』図録、2006)