『オデュッセイア』

  • 作家名 マルク・シャガール
  • 制作年 第1巻1974年刊、第2巻1975年刊
  • 技法・素材 リトグラフ/紙
  • サイズ 第1巻外形: 43.0 x 33.9 x 8.8 cm; 第2巻外形: 42.9 x 34.0 x 8.8 cm
著作権有効作品のため、画像を表示していません。画像は『シャガール 私の物語』展図録(p. 116、cat. 31)をご覧ください。 古代ギリシアの詩人、ホメロスの長編叙事詩『オデュッセイア』は、英雄オデュッセウス(ラテン語名ユリシーズ)が、トロイア戦争から妃ペーネロペイアの待つ故国イタケーに凱旋するまでの漂流譚である。一つ目の巨人ポリュフェモス、海神ポセイドン、魔女キルケー、うるわしい仙女カリュプソが次々とオデュッセウスの旅路を妨げる。ようやく帰還を果たした主人公は、かつて妻に求愛した男たちを皆殺しにし、夫婦はお互いの忠誠心を確かめるのであった。  本作品は、シャガールの挿絵本制作における集大成である。線描の強弱が巧妙に使い分けられ、登場人物のさまざまな性質や、劇的、あるいは静的な場面が描写されている。カラー・リトグラフの図版のほか、ギリシアの壺絵などを描いた単色の簡潔なデッサンをテキストページに織り込み、本としての魅力を一層高めている。シャガールは『ダフニスとクロエ』(1961年刊)の制作を契機にギリシア神話に情熱を注ぎはじめ、念仏での暮らしのなかで、地中海文明に晩年の主要なテーマを見出している。(『シャガール 私の物語』図録、2008)